
旅
完結旅
『旅』は、入江亜季による2009年から2022年までに発表された13編の短編を収めた作品集です。それぞれの物語は独立しており、物理的な移動、心の移ろい、人生の転機など、「旅」をテーマに描かれています。10年以上にわたって生み出された読み切りや描き下ろしをまとめた一冊で、作家特有の幻想的でありながら日常の機微を捉えた作風が堪能できます。
ページをめくると、旅に出る王子、水の底で暮らす少女、砂漠で迷う男、いわくつきの眼鏡など、多彩な登場人物が現れます。また、家を守ること、家族で音楽を奏でること、もう会えない人を想うことなど、日常の小さな瞬間に焦点を当てた物語も収められています。哀愁、ユーモア、優しさが作品ごとに交錯しながらも、常に「旅路」を形づくる瞬間へと視線が注がれています。
さらに、著者の代表作のひとつである『乱と灰色の世界』の番外編も収録され、その世界観を広げています。総じて『旅』は、自ら選んだ道、そして歩むことになった道について静かに考えさせる、物語のモザイク画のような一冊です。