
昭和元禄落語心中
完結昭和元禄落語心中
与太郎は、家族も頼れる当てもなく刑務所を出所したが、ただ一つの確信を胸に抱いていた。それは、日本の伝統的な話芸である落語の道に進むこと。服役中に名人・八代目有楽亭八雲の高座に心を奪われ、自由の身になるとすぐに彼の寄席を訪れ、弟子入りを志願する。
弟子を取らないことで知られる八雲は、渋々ながら彼を受け入れ、「与太郎」という名を与える。無骨で粋もわきまえぬ与太郎は、師匠の庇護のもとで暮らす小夏とともに、格式と技が求められる落語の世界で懸命に道を模索し始める。小夏もまた、落語に密かな憧れを抱いていた。
やがて与太郎は、師匠と小夏がそれぞれに暗い過去を背負い、その影が家の空気を張り詰めさせていることを知る。それでも彼の視線の先には、昭和という時代とともに消えゆこうとしている芸の新たな担い手となる未来だけがあった。
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