蟹
完結蟹
寒く孤独な夜、男は東京の街をあてもなくさまよう。その足取りのままたどり着いたのは、バラックの立ち並ぶ界隈。そこで彼は、アスファルトの上を歩く一匹の蟹と出くわす。ふとしたその邂逅が、幼い頃、家族と海辺を訪れ、砂の上をちょこちょこと走り回る蟹たちを眺めた記憶を呼び覚ます。
その光景をきっかけに、主人公は貧しさと家族の緊張に彩られた幼年時代の出来事を思い起こす。蟹の記憶は、無垢の喪失と時の流れを見つめる思索の糸となり、やがて夜の都会は憂愁と根無し草感の舞台へと姿を変えていく。
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