KADOKAWAがKMCを始動:文学の古典が高級マンガに
KADOKAWA Masterpiece Comicsはすでに8作品を刊行し、さらに4作品を準備中。複数言語版があり、価格は通常のマンガより高め。
KADOKAWAは公式にプロジェクト KMC(KADOKAWA Masterpiece Comics)を発表した。日本と海外の文学の傑作を高品質なマンガにする専門レーベルだ。2022年に始まり、現在は8作品を刊行、4作品を準備中で、中国語繁体字、フランス語、ポルトガル語版もある。
考え方はシンプルだ。「難しい古典」の領域に留まりがちな小説に、マンガという入り口を用意する。ただ翻案するだけでなく、フォーマット間の循環を生み出す。マンガを読んだ後に原作へ進むこともできるし、その逆も機能する。
現在のラインナップは、パウロ・コエーリョの 『アルケミスト』 、ポール・ギャリコの 『猫語のノート』 、柳田國男の 『遠野物語』 、筒井康隆の 『ルージュの残像』 。さらに魯迅の 『阿Q正伝』 、夏目漱石の 『門』 、森鷗外の 『ヰタ・セクスアリス』 、横溝正史の 『本陣殺人事件』 が加わった。
文学と文化の傑作を表す表紙が並ぶKMCレーベルのコミックス。予想外の成功から生まれたプロジェクト
出発点は、ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの 『戦争は女の顔をしていない』のマンガ化だった。このコミックスは日本で40万部以上を売り上げた。それまで国内ではほとんど知られていなかった作品としては大きな数字だ。
KMCを当初から推進してきた編集者の伊藤ひとみはこう説明する。「マンガには、正しい翻案さえできれば、難解な作品を多くの人に届ける力があります」。それが古典専門レーベルを立ち上げる後押しになった。
プロジェクトが国際展開に踏み出したのは、社内プログラムGAP(Global Business Acceleration Program)のおかげだ。KADOKAWAの社員がグローバルビジネスのアイデアを提案する制度で、マネジメント部門の井上亜美は、世界で1億部以上売れた 『アルケミスト』 の可能性に注目し、KMCを日本国外へ展開することを提案した。この提案はプログラム初の承認案件となった。
輸出戦略としてのアート
レーベルが最も力を入れている点の一つが作画だ。現在のプロジェクトリーダーである小川和久は、海外の読者はアートの質を非常に重視すると指摘する。「作品に人を惹きつける美しさがあれば、売れ行きはまったく変わる」と語る。
最も分かりやすい例が 『ヰタ・セクスアリス』だ。出版社は小説の雰囲気に合う画風の漫画家を探し、耽美的な線を持つ国安勇気を選んだ。この作品はSNSで非常に好意的な反応を生み、特にInstagramでは欧米のユーザーから「モダンアート」と評された。
レーベルのマンガ編集者、山本恭成は、 『本陣殺人事件』 が最大の難題だったと明かす。「ミステリーでは、トリックを壊さずに手がかりを一つも削ることはできません。小説を何十回も読み、ページ構成を何度も作り直しました」。その努力は報われた。巻末解説を担当した山口直孝教授は「無駄なコマが一つもない」と評した。
KMCプロジェクトの現責任者、小川和久と山本恭成。高めの価格、明確な賭け
KMCの各巻は1300円から1400円で、日本のマンガの通常価格より高い。理由はコスト回収だけではない。KADOKAWAは作者に公正な報酬を支払い、表紙デザインと造本がその価値を反映することを望んでいる。
この賭けはすでに結果を出している。 『アルケミスト』のマンガ版発売後、角川文庫版の原作小説の月間売上は明らかに伸びた。フォーマット間の循環は機能している。
今後数か月の刊行予定は、谷崎潤一郎の 『春琴抄』 、泉鏡花の 『高野聖』 、フランツ・カフカの 『城』 、横溝正史の 『獄門島』 。さらに9月からKMCはオープンレーベルとして機能しており、KADOKAWAの各部門の編集者が作品制作に参加できるようになった。
最終目標を小川はこうまとめる。「世界中の書店の棚がKMCで埋まり、あらゆる年代の読者が日本のマンガを通じて傑作を楽しむ姿を見たい」。今のところ、ラテンアメリカでの配布やスペイン語版ライセンスを確定した出版社についての発表はない。
マンガ化してほしい古典はありますか?コメントで教えてください。
言及された作品
0 コメント
ログインしてコメントを残す
このニュースについてあなたの意見を他の人と共有しましょう。
まだコメントはありません。最初のコメントをどうぞ。



