
下宿の頃
完結下宿の頃
戦後の東京。青年・次郎は、下町の安宿に下宿することになる。そこには、しっかり者の未亡人女将と、風変わりな住人たちが暮らしていた。狭い部屋と薄暗い廊下のなかで、次郎は自分の居場所を探しながら、すれ違うようにして生きる他人の人生を静かに見つめていく。
下宿の日常は、ささやかな諍いや、それぞれが抱える秘密によって揺れ動く。金もなく、芸術の道を夢見る次郎は、自らの志と、周囲を覆う灰色の現実とのあいだで身動きがとれずにいた。住人たちとの出会いと行き違いを重ねるうちに、彼は共同生活の難しさと、見かけの奥に隠された深い傷に気づいていく。
郷愁と冷徹さを併せ持つ眼差しで、古い慣習と新しい世代がぶつかり合う、変わりゆく日本社会の一瞬を描く。下宿は、孤独を分かち合う者たちの縮図となる。流れに身を任せるのか、それとも自らの運命を変えようとするのか。次郎の決断が問われる。
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1998