
別離
完結別離
男は列車に揺られながら、流れ去る風景を眺めつつ、記憶の底へと沈んでいく。幼少期から成熟の時を経るまで、彼の人生を刻んできた束の間の出会いと決定的な別れが、次々と思い起こされる。過ぎ去った過去の光景は、それぞれに抑えきれない感情を伴い、二度と戻らぬ瞬間として胸に迫る。
主人公は、人との、場所との、そして時間との別離の不可避性に直面する。自らが下した決断、歩まなかった道、やがて消えていった関係性。それらが彼を孤独と時間の流れについての深い内省へと導く。薄れゆく面影と置き去りにされた駅々のなかで、彼は憂愁と儚さへの諦念のただなかに、なお意味を探し求める。
本作は1987年に『COMICバク』誌に前後編で発表された、つげ義春の最後の作品である。親密で詩的な筆致により、別れの本質と記憶の脆さを描き出す。
関連作品
1998