ゆめみのえ
完結ゆめみのえ
今から二百余年前、絵師・鍬形蕙斎は、人や動物を生き生きと描いた絵手本『略画式』を世に送り出した。その筆致は見る者を惹きつけ、描かれた生き物たちは今にも動き出しそうなほどの生気を帯びていた。
ある日、蕙斎は一匹の鯉を描いているうちに、いつしか深い眠りへと落ちていく。すると夢の中で、彼は自らが描いていたその鯉へと姿を変えていた。水の感触を全身に受け、尾びれをしなやかに動かしながら、川の中を自由に泳ぎ回る喜びに心を躍らせる。しかし、その幸福な時間は長くは続かない。やがて漁師の網にかかり、捕らえられてしまう。
現実と幻想の境界が溶け合う中で、蕙斎は自らの筆が生み出した世界を、描かれたものの視点から追体験していく。絵の中の命と、それを描く者の心が交錯する物語。