夜になった雪のはなし
完結夜になった雪のはなし
熱に対する自らの脆さを自覚した雪の塊は、溶けてしまうのを避けるため、ミミズへと姿を変える。しかしミミズは地上と光を求めるようになり、今度は木へと変身する。この変態の連鎖はそこで終わらない。その生き物はより高次の、あるいは異なる状態を求めて形を変え続け、新たな姿を次々と獲得していく。
それぞれの変化は、自己探求の旅における一歩であり、原初の存在である雪は、記憶のなかで消え去っていくようにも見える。だが、そうした度重なる変容のさなか、その生き物はいつか思い出す。この連鎖が始まる前の、かつての自分を。
本作は、詩的な変化の連なりを通して、アイデンティティと記憶の本質を探求する。それぞれの姿は喪失であると同時に獲得でもあり、過去は決して完全には手放されない。