
通り雨
完結通り雨
一匹の黒猫が、取り壊し途中の商店街を彷徨っている。錆びついた看板や割れたショーウィンドウが残る廃墟のような空間で、時間は止まったままのように見える。猫はいつもこの場所を独りで歩いている。にわか雨が過ぎた後、猫は見慣れた景色とは異なる風景を目にする。まるで嵐が別の現実への扉を開いたかのように。
猫の日常は、雨によって一変する。見慣れたはずの通りが、雨上がりには未知の場所へと変わっているのだ。瓦礫と水たまりの間を進みながら、猫は雨粒の合間の短い時間にだけ存在するかのような世界を探検する。影は長く伸び、色彩は鮮やかさを増し、雨の後にだけ姿を現す平行世界がそこに広がっていた。
猫は好奇心のままに歩みを進める。目の前に広がる光景が夢なのか、それともこの通りが放棄される前の記憶なのかはわからない。一歩進むごとに、猫は儚いイメージの迷宮へと分け入っていく。日常が異質なものに変わり、失われたものが一瞬だけ命を取り戻す、そんな不思議な場所へ。
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