
少年とさくら
完結少年とさくら
太一は戦後の東京で、日々働きづめの母と二人で暮らす少年である。父は戦争で亡くし、家でひとり過ごす時間ばかりが続く。孤独と喪失感に包まれた毎日の中で、太一は笑う理由をなかなか見つけられずにいた。
ある日、近所を歩いていた太一は、公園で古い桜の木を世話する老人と出会う。その木は枯れて命がないように見えたが、老人は驚くほど優しい手つきで接しており、太一の好奇心を強く引きつける。老人との交流を通して、太一はその桜の木にまつわる話や、再生のときを待つために必要な忍耐について教わる。
そうして少しずつ、太一は気づいていく。一見死んでしまったように見えるものの中にも希望の種は残されていること、そして愛情と手間をかけることで、失われたと思われたものに再び命を吹き込めるのだということを。