押絵ト旅スル男
完結押絵ト旅スル男
昭和初期、ひとりの不思議な老人が列車に揺られながら、今から三十年前に起きた兄の失踪について静かに語り始める。その出来事が起きたのは、日本の海辺の町・魚津にそびえ立っていた十二階建ての凌雲閣のすぐ近くであった。
老人の話は、やがて望遠鏡や覗き見芝居といった見世物の記憶へと広がり、現実と夢の境界を少しずつ曖昧にしていく。何が実際に起きたことで、何が心の中で生まれた幻だったのか、その輪郭は語り進めるほどにぼやけていく。
過去をたどる言葉の先に待つものは、果たして真実なのか、それとも長い歳月のうちに塗り替えられた記憶なのか。列車の揺れとともに、物語は静かな闇の奥へと進んでいく。
もし気に入ったら、こちらもどうぞ
この作品とジャンルを共有する作品。