
ホウセンカ
完結ホウセンカ
終身刑に処された老囚人・阿久津は、独房で孤独な死を待つばかりの日々を送っていた。絶望に沈む彼の耳に、ある日思いがけない声が届く。それは、人間のように話すホウセンカの花だった。奇妙な対話を重ねるうちに、阿久津は自らが歩んできた人生と向き合い、静かに省みるようになる。
物語は現在の獄中と、1986年の夏とを行き来する。かつて阿久津は、6歳年下の女・奈々とその息子・健介とともに、庭先にホウセンカが咲き乱れる質素なアパートで暮らしていた。しかし、裏社会に絡むある暴力的な出来事が、その日々を一変させる。
そして今、牢獄の中で語りかけてくるホウセンカこそが、あの夏の記憶と家族の物語を呼び覚ましていく。